大橋美加の”シネマフル・デイズ”③ 『秋のソナタ』

最終更新: 2月27日

1978年 スウェーデン映画 イングマール・ベルイマン監督『秋のソナタ』(Hostsonaten)

初めて本作を観た時のことを想起すると、冷や汗が出る。

女性にとって永遠のテーマである、母と娘の物語であるから。

そして本作は、大女優イングリッド・バーグマンの

劇場用長編映画としての遺作となるから。 バーグマン扮する、世界的に活躍してきたコンサート・ピアニストが

ノルウェイ北部の村に住む娘の家にやってくる。

63歳にして、すらりとスタイルが良く、

コートとスラックスが似合う華やかな母親シャルロッテ。

迎えるのはリヴ・ウルマン扮する四十路に近い娘エヴァ。

年かさの牧師である夫と静かな暮らしをしている。 ウルマンはベルインマン監督の公私に渡るパートナーでもあった、

やはり国際派女優。バーグマンほどの美人ではないが、

”美人役”も随分とこなしてきた女優。

本作では髪型や眼鏡により、

母に比べて見劣りする役どころである。


7年ぶりの再会を果たした母娘の心の”澱”が焙り出されてゆく。

クローズ・アップを多用した二人の名女優の丁々発止は、

まばたきも出来ないほどの緊張感のうち、あっという間にループに陥る。 イングリッド・バーグマンは本作で渾身の力演を見せたあと、

1982年に67歳で亡くなった。

思えば彼女自身も夫と娘を残し、ロベルト・ロッセリーニ監督との恋に走り、

4人の子をもうけ、さらに別の男性と結婚した”母”である。

「年をとることは怖くない。年をとって演じられる

素敵な役があるかということのほうが心配」と語ったバーグマン。

最後の長編映画である本作で、最も自分を曝け出せる役を演じきったような気がする。


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