大橋美加の”シネマフル・デイズ”⑨『甘い生活』

1960年イタリア・フランス合作映画  フェデリコ・フェリーニ監督『甘い生活』(DOLCE VITA) 映画にのめり込むきっかけとなったのは、 フェデリコ・フェリーニ作品を知ってから。 たしか、三軒茶屋の名画座だった。 今では、全作品を鑑賞しご本人にも一度お会いしたことを自負もするが、 観かえすたびに、その才能に驚嘆するばかり。 ”ア”で始まるフェリーニ作品のうち、 きわめて親しみ深いのは自伝的な『アマルコルド』なのだが、 今回は初めてフェリーニ作品に触れるかたを鑑み、 彼の作風を決定づけた『甘い生活』を取り上げたい。 イタリアを代表するスターであり、”伊達男”の名がぴったりの マルチェッロ・マストロヤンニが扮する主人公は、 著名人や芸能人を取材する記者。同棲する女性がいながら、 魅力的な女性に目がなく、乱痴気騒ぎも大好きな男。 マルチェッロの日常が、一切の説明を避け、 とびきりのモノクローム映像で次から次へとエピソードが押し寄せる。 観客は”ストーリー”を追うのでなく、 主人公の人生を一緒に”生きる”こととなる。 本作のスコアはもちろん、ニノ・ロータであるが、 ジャズソング”Stormy Weather""Yes,Sir.That's My Baby" "Mack the Knife"も使用されている。 たった一度、妻で名女優ジュリエッタ・マシーナと来日したフェリーニに、 どきどきしながら音楽について質問した。 「アメリカの曲は、いつも私の頭のなかで鳴っている。 ニノ・ロータに歌って聞かせ、探してきてもらう」と語ってくれた。 一生一度のミーハー、一緒に写真撮影も叶った佳き想い出である。 フェリーニ作品はただ、観て欲しい。何度も何度も観て欲しい。 「私が映画だ」と豪語した、その意味が見えてくる。

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