大橋美加の”シネマフル・デイズ”⑫『アリスの恋』

1974年 アメリカ映画 マーティン・スコセッシ監督『アリスの恋』 (ALICE DOESN'T LIVE HERE ANYMORE) ロード・ムーヴィーは、たとえ救いのない物語でも爽快感を伴う。 不幸を抱えて定住しているよりはマシと思えるからだろうか。 スコセッシの初期の作品である本作の主人公アリスも、真の人生を求めてさすらう女性。 女性のロード・ムーヴィーの先駆け、ひいては”女性映画”の先駆けではないか。 貴重な一作と言える。 あたかも『オズの魔法使』(1939)のジュディ・ガーランドの パロディ風ファースト・ショット、ジャズソング ”You'll Never Know”を口ずさむ少女が登場する。 これは、シニカルな内容の映画に違いないと、早々に予感させる。 大人になったアリスに扮するのは演技派エレン・バースティン。 11歳の一人息子トミーを抱え、少女時代の夢を叶えるべく奔走と相成る。 エレンの弾き語りで、古いジャズソングがいくつも流れる。 ”Where or When~When Your Lover Has Gone~Gone with the Wind”の しりとりメドレーなどなど。 口の減らないトミーと頼りない母アリスとの丁々発止も、 笑える冷や汗ものだが、スコセッシ組であるハーヴェイ・カイテル、 撮影当時11歳くらいのジョディ・フォスターも並々ならぬ存在感を示す。 本作で監督に気に入られ、『タクシー・ドライバー』(1976)の 少女娼婦役でブレイクすることになる。 エレンは本作でオスカー(主演女優賞)を獲得。 テーマソングとして使われたハリー・ウォーレン作曲、マック・ゴードン作詞の ”You'll Never Know”は、近年ではギレルモ・デル・トロ監督のオスカー作品 『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)の愛のテーマとしても使われた、 永遠のトーチ・ソングである。

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